2015年9月26日土曜日

ポエム① ぶんちょうさん

 あやさんちの文鳥たちは、その後も新しい生命が加わり、ますますにぎやかにすごしています。
 
 14羽になった文鳥たちの様子はおいおいお知らせするとして、今回はポエムです。じつは、文鳥さんは小さな子どもが苦手なんです。
 
 
 
「ぶんちょうさん」
 
 
ぶんちょうさんて わたしがいくと
 
バサバサさわいで にげるけど
 
どうして わたしじゃ いけないの
 
ばあばのかたには とまるのに
 
そんなに わたしが こわいのかしら 
 
わたし ちょこちょこ あるくけど 
 
なんにもしないし やさしいわ
 
ぶんちょうさんは おくびょうね
 
 
ぶんちょうさん きょうは ポピポピ
 
チュンチュン なかないけれど
 
どこか ぐあいが わるいのかしら
 
わたし なんだか しんぱいだから
 
ちょっと のぞいてみたいけど
 
わたしがのぞくと あばれるから
 
ばあばに そっときいてみた
 
そしたら かんうで だるいんだって
 
ぶんちょうさんも たいへんね
 
 
ぶんちょうさん ばあばが 
 
おしえてくれたけど
 
かんうって からだじゅうのはねが 
 
ぬけかわるんだって
 
なつのはねに かわるとき
 
だるくて ねむいって ほんとなの
 
おしゃれをするのも たいへんだけど
 
うすぎになったら ビュンビュンとんで
 
また にぎやかに さわげるわ
 
みんなで なかよく うたおうよ
 
 
ぶんちょうさん あんよはあるけど
 
おてては ないの
 
おりょうりしたりは できないけれど
 
かたいものでも くちばしで
 
つぶせるから へいきなの
 
つばさがあるから いらないのかしら
 
つばさをひろげて はばたいたら 
 
たかいところも なんのその
 
いやなことなど わすれそう
 
わたしも いっしょに とびたいわ
 

2015年9月22日火曜日

2015年9月17日木曜日

あとがき

 それから半年後の2015年2月22日未明、フーはこの世を去った。
 いつものように朝7時、鳥かごにかけてある布を外し、
「フーちゃん、おはよう」と呼びかけたのに、ツボ巣の奥から出てこなかった。2週間ほど前から左足の付け根部分がぐらぐらになっていたので、夜は療養用の鳥かごで寝ていた。
 少ししてもフーが出てこないので、ツボ巣ごと鳥かごから出して、中からフーを取り出すと、動かない。まだほんのり暖かかったけど、明らかに死んでいた。
 1週間前には立てなくなった左足を診てもらうため、小鳥の病院に連れて行った。4年半前に死にかけたとき卵を出してもらった病院だ。けれども、やはり治るものではないようだった。
 さらに目の位置がおかしいと、頭の膨らみを指摘されて、たまっているうみを針で出してもらった。ときどき目が塞がっていて目薬をさしていたけど、それは脳からきていたものかもしれない。
 フーは、もう何年も飛んでいないので、ここ2年近く手に乗せて羽ばたきの運動をさせていた。何とか飛べるようにしてやりたかったのと、こうすると排便にいいようなので続けていたけど、飛ぶこともできないのに足まで使えなくなってしまっては、えさを食べるのも難しい。
 ところがフーは頭がいいから、ツボ巣から鳥かご内に下りると、動かない左足の代わりに左羽をバサバサさせて移動し、下に置いてあるえさと水を口にした。
 そうやってたくましく食べていたのに、病院からもらってきた抗生剤やビタミン剤入りの水を飲んでいたのに、ついに力つきた。
 きっかけは、2日前に起きた思いがけない出来事だった。そのときフーは夫の手の中にいて、何を思ったのか突然、飛び出したのだ。飛べるはずがないから居間の床に落ちた。
 その衝撃でどこかを悼めたのだろう。そのあと、あやさんの手の中で発作のように苦しそうに変な声で鳴いた。少し落ち着いて、そのままえさを食べたものの、また苦しそうな声で鳴き、必死で温めると、ようやく静かになった。
 発作はこの2回だけで、そのままあやさんの手の中にいると、パピが心配そうに手にきた。そしてフーの頭に嘴を当てて慰めたら、フーは安心したように静かにしていた。
 それから、療養用の鳥かごにフーを戻すと、えさを食べていたのでホッとしたものの、衝撃的な出来事だった。
 翌朝、心配しながら鳥かごの布を外すと、フーはツボ巣から顔を出していた。いつものように朝のあいさつをする。フーがツボ巣から出てきて、えさを食べたので、またホッとする。昼近くにはあやさんの手の中でえさを食べると大きなフンをして、安心したように眠った。その後も夫の話では自分でえさを食べていたようだけど、夜中に力尽きてしまったらしい。
 あの卵を抱えての事故以来、満身創痍でよく頑張って生きてきた。7年半の一生だったけど、文鳥の平均寿命は生きたようだ。
 命日は2月22日」だから「フー、フー、フー」で「フー3(さん)の日」になる。水浴びが大すきで、濡れてみすぼらしくなった羽をよくあやさんの肩や手に乗って乾かしていた。あのときの感触が甦る。
 本当に賢くて優しい子だった。いずれ別れの日がくることは覚悟していたけれど、もっと一緒にいたかった。
 静かに死んでいったことがせめてもの慰めだ。
 これからは、天国から、ピーと一緒にみんなのことを見守っておくれ。フーと過ごした7年半、楽しかったよ。ありがとう。
 この物語をフーに贈る。

2015年9月11日金曜日

(二十)思いがけないヒナ②

 生後1か月がすぎ、心配していたチビも、下から2番目の止まり木に上がれるようになった。
 チビのこともあって、夫のさしえはまだ数日続きそうだけど、チビは相変わらずほとんど口をあけない。夫が育て親を無理やり口に突っ込んで食べさせる。
「やっぱりチビは、うまく育たないかもしれないな」
 夫が心細いことをいう。ひとりで食べて、ちゃんと飛べるようになるかが問題だ。
 その2日後、あやさんがヒナたちの鳥かごをのぞくと、下のフゴにも止まり木にもチビの姿がなかった。クリとマミは1番上の止まり木にいて、上部のえさ入れなどに移動している。
 2羽があやさんを見て喜んで鳴くと、ツボ巣からチビが顔を出した。ホッとして夫にきく。
「あなた、さっき、チビちゃんをツボ巣に入れた?」
「いいや」という返事。すると、チビは自力で、ツボ巣のある上の止まり木まで上がったことになる。これまでの動きからすれば、すごい飛躍だ。
「そうか、チビも、ようやく自分でツボ巣に入れるようになったか」と、夫もうれしそう。
 口の中に無理やりえさを押し込んでいただけに、無事に育つかどうか心配だった。手のかかる子ほど可愛いという。
 やっと鳥かご内のフゴがいらなくなり、今夜から3羽がツボ巣の中で寄り添って寝るだろう。
 チビは、まだ1日に3回さしえを食べているけど、食べる意欲も出てきたので、それなりに成長しているようだ。
 マミとクリが高さ1メートル40センチほどの鳥かごの上に飛んで行ったのを見て、チビもそこに行きたそうだった。ソファーのそでからじっと見ている。距離にして3メートルもないのだけど、チビにとっては高いハードルらしい。
 数日前には、あやさんが手に乗せてそこまで連れて行ったけれど、きょうは知らん顔をしていた。すると、チビがついに飛び上った。そのまま飛んで鳥かごの上に無事着地した。ヒナたちが載っているのは、トビとユウのいる鳥かごで、ヒナたちが生まれ育ったところだ。
 母親のトビとユウは、もう次の卵を産んでいて、ヒナたちには関心がないのか、ツボ巣に入ってしまった。
 ところで、いまユウとトビが温めている卵がかえることはない。これ以上、ヒナが生まれては困るから、夫が偽卵に置き替えたのだ。
 クリは嘴であやさんのブラウスのボタンを噛むのが好き。それに手のひらのやわらかい部分も噛む。
「クリちゃん、痛いよ」というと、やめるどころか余計に強く噛む。こんな形で親愛の情を示してほしくないのに、マミまでが真似をする。その点、チビは手に乗せると気持ちよさそうにおとなしくしている。だから、あやさんはチビを乗せていたいのに、クリが来てチビをどけてしまう。クリは自分が1番可愛がられたいらしい。
 ヒナ3羽が遊んでいるときに、父親と思われるメグも放鳥。パピのように、子どもに高い位置の止まる場所を教えるかと思ったからだけど、メグのしたのはトビとユウの鳥かごの上に止まって、近づくクリを追い払うこと。まるで、お前たちは、ここにくるなといわんばかりに、メグの父親のチーとそっくりに、
「ぐるるる―」と唸って威嚇する。クリはびっくりして、さすがに向かって行かなかった。すると、次の瞬間、面白いことが起きた。
 ソファーにいたチビが、急にソファーのそでに行き、クリとメグのいる鳥かごの上に飛んで行ったのだ。兄弟のクリを加勢しに行ったようで、小さいながら、メグに向かってかまえている。いや、唸ってもいるようだ。なかなか見上げた兄弟思いの根性だ。チビは少し飛べるようになったので自信がついたらしい。おそらくお互いに親子だとは知らないのだろうけど、チビの勢いにびっくりしたのか、それとも小さな子を相手にしてはまずいと思ったのか、メグはその場から飛び立った。こうしてみると、クリは案外、気が弱く、チビは見かけによらず強いのかもしれない。
 チビは、いまだにさしえをしてもらい、そのあと手の中で赤ん坊のようにおとなしく寝ているから、そこからは、とても想像できない行動だった。かなり遅れて発育しているとはいえ、一人前の仲間意識と勇気を持っているとわかって感心した。
 そして、生後1か月半になる4月半ばに、シナモン文鳥のマミは里子に出た。鳥かごには、クリーム文鳥のクリと桜文鳥のチビが残ったけど、その晩は何となく寂しそうだった。とはいえ、このままずっと、3羽が同じ鳥かごで暮らすのは難しいだろう。

 文鳥たちと暮らしたこの7年余の間に、あやさんの目はだいぶ悪くなった。それはもちろん文鳥たちのせいではないけど、ますます彼らの爪を切ったりはできない。だからあやさんがひとりで13羽もの文鳥の面倒をみるのは無理だったわけだけど、だからといって夫がひとりでできたかといえば、それには疑問符がつく。つまり老夫婦が協力して、何とか文鳥たちの世話をしてきたということで、時間があったからできたように思う。そして、この間ふたりが元気に過ごせたのは、彼らのお蔭のような気がする。たとえ相手がペットであっても、何か役に立てることは、それなりに生き甲斐につながる。
 あやさんには見ようとするものが見えないけど、周辺は見えるから、だいたいはわかる。だけど、何といっても残念なのが、文鳥たちの表情がよくわからないことだ。それでもみんなそれぞれの個性を持っていて、あやさんへの接し方も違うから、長年一緒に暮らしていればだいたいの見当はつく。同じように見える桜文鳥のココとユウでも、ココはたいてい桜文鳥のナナのそばにいる。白文鳥のトビといる桜文鳥はユウとなる。シナモン文鳥のチーとその子どものルミもそっくりだけど、ルミはたいていマイのそばにいる。そうでなくても「ぐるるる―」とは鳴かない。
 そんなふうにして判るのだけど、鳴き声の違いも判別の手助けになっている。
 この家では、あやさんに限らずフーも目が悪い。フーはあれ以来飛べないままだし、だいぶ弱ってきている。ときどき目がふさがっていて目薬をさすと目をあけるものの、よく止まり木から落ちている。。
 するとパピが大声でさえずって、ほかの文鳥も騒ぎ出すから、それに気づいてあやさんが鳥かごに行くわけだけど、パピの活躍はそれだけではない。夜にフーがツボ巣から落ちないように、ツボ巣の前の止まり木で向かい合って寝る。鳥かごにはツボ巣が2つあるのに、寒い冬でもそうしている。フー思いの感心な夫なのだ。
 パピは止まり木から落ちてしまったフーを持ち上げて元の場所に戻すことはできない。それが鳥というものなのだろうから仕方ないけれど、彼はえらいのだ。だれもフーを助けに行かないときは、自分も鳥かごの下に下りて、フーのそばにいたりする。
 フーは飛べなくなったものの、毎日一生懸命に生きている。そしてパピとフーはとても仲良しだ。ピポはいまでもフーのそばが好きなようで、近づきすぎてパピに追い払われている。それでも全然、気にしていないようで、ピポにとっては、ほとんどが遊びだ。
 あやさんは文鳥たちと暮らして、彼らにいろいろ教わったような気がする。みんないつも呑気そうに遊んでいるけれど、じつは我慢強く真剣に生きている。そして年々、賢くなっていく。
 ふり返れば、すべてはフーのために鳥かごが増えていった。ピポがきて、パピとチーがきて、そして、子どもたちが生まれた。あやさんにとって、フーはピーの忘れ形見のようなものであり、いまでもピーはみんなの中に生きている。
 だから、友人たちが別れ際にいうのだろう。
「ピーちゃんたちに、よろしくね」って。       (完)

2015年9月4日金曜日

(二十)思いがけないヒナ①

 2014年2月末、あやさんちは、また思いがけない出来事で沸き立っていた。それは、2歳になったトビとユウ姉妹のツボ巣をのぞいた夫の奇声から始まる。
 トビ・ユウ姉妹は、いまも同じ鳥かごにいて、2つあるツボ巣のうち夫がのぞいているほうには、2羽が産んだ卵が10個くらい入っている。
「ええっ?」といったきり、しばらくツボ巣をのぞいていた夫が、変な顔をしていった。
「おかしいな。何か、動いているぞ。ヒナでもかえったのかな」
「えっ? まさか? だれの子?」
「多分、トビの子だな」
 あやさんが知りたいのは、ヒナの父親がだれかということなのに、夫がそういう。つまり、トビは白文鳥で、桜文鳥のユウよりモテルから、かえったのは、トビの卵だろうというのだ。
「じゃあ、父親はだれかしら?」
「メグかマイの子じゃないかな。どちらもよくトビを追いかけていたから」
 夫はそういったけど、メグはトビとユウの1年後に生まれた弟だ。マイなら、フーとパピの子どもだから、そのほうがいいように思うけど、マイはすでにルミと結婚している。一緒になって2年以上になるのに、まだルミの産んだ卵がかえったことはない。足先が丸まっているマイに比べて、メグは素早くフーにもつかみかかるほどだから、やはりメグの子の可能性が高い。
「でも、トビたちの卵がかえるなんて、考えてもみなかったわ」
 というのは、同じように姉妹でいるナナとココの卵はかえったことなどないからだけど、考えてみれば、ナナとココはそれぞれ別のツボ巣に卵を産んでいる。だから1羽で温め続けるのは難しい。
 ところがトビたちのように片方のツボ巣にまとめて産めば、交代で温め続けられる。なかなか考えている。
「でも無精卵なら、かえるはずないのに」と、トビとユウにしてやられたようで、あやさんは複雑な気分。
「生まれたのが1羽だけならいいけれど」
 そんな心配をよそに、翌日にはまたヒナが生まれた。2羽なら古い鳥かごを使えば何とかなりそうだけど、これ以上はゴメンだ。
 ところが、次の日にまた1羽かえって、ヒナが3羽も生まれてしまった。1羽だけなら間違いということもあるだろうけど、こうなると確信犯だ。
「やっぱり、トビの産んだ卵かしら」
 メグとトビのあいだの子のようだけど、ユウも懸命に卵を温めていた。ヒナがかえってからも交代でえさをやっている。どちらの子かなど、どうでもいいように協力して育てている。子育ては大変だから、人間のシングルマザーも2人で組んで育てたらどうかと思うけど、それはそれで難しいのだろうか。
 ヒナは生まれて2週間ともなると食べる量が増え、トビとユウの大変さが目に見える。3月半ばに、夫がさしえを始めるためヒナをツボ巣からフゴに移し、暖房器を付けた別の鳥かごに入れる。
「こんどは何文鳥かしら? 白文鳥もいる?」
「白文鳥はいないみたいだな。どれも目が赤いから、シナモンか桜文鳥のようだな」
 以前に比べると、夫もけっこう早いうちから判別がつくようになっている。
 白文鳥の両親なのに」と、またあやさんの疑問が頭をもたげるけれど、そういうものだと思い直す。
 翌朝、いつものようにあやさんが鳥かごの覆いを外すと、トビが突然、暴れ出した。ユウを追い回して、何か怒っているようだ。もしや? と思い、ヒナの入ったフゴを見せようと、トビたちの鳥かごの前に持って行く。
 ヒナがツボ巣にいないので、トビがユウに怒っているようなのだ。トビは意固地で頑固なところがあるから、ユウが犯人だと思い込んだら執拗に追い回す。やはり、ヒナはトビの子で、そのことをトビはわかっているらしいけど、それにしては、ずいぶんの仕打ちだ。ユウにあれほど世話になったのにと思いながら、あやさんはフゴを斜めにして、ヒナが見えるようにする。けれども2羽はフゴが恐いのか、バサバサと暴れ、ヒナを見せるどころではなくなった。
 ユウは気の毒に、この朝、何度も追いかけられていた。
 それが治まったのは、夫が8時半に起きてきて、ヒナのさしえを始めたときで、ヒナをフゴから出すと鳴き声がしたので、ようやく静かになった。ヒナが無事だとわかったらしい。それで安心したのか、その後、トビはほとんどヒナに関心を示さなくなった。
 フゴに移してから1週間、1番大きい「クリ」はもうフゴのふちに立てるようになっている。「マミ」も順調に育っているようだけど、最後に生まれた「チビ」は、発育が遅れている。
「チビは、口をあけないんだ。しようがないから、無理に口の中に押し込んで食べさせないと、死んじゃうぞ」
 チビは口の横のパッキンがおかしいらしく、口を大きく開けられないようだった。
 クリは一番成長が早く、もう羽ばたいている。背中がクリーム色で頭と尾が白っぽくなってきたので、クリーム文鳥らしい。マミはルミがヒナのときのような黄金色をしているから、シナモン文鳥だろう。チビはその名のとおり一番小さくて、発育も遅れている。鳴き声も小さいから少し心配だけど、同じ親から生まれても、ずいぶん違いがあるものだ。
 生後1か月になると、もうクリは飛べるようになって、チビもそれなりに羽ばたいたりする。マミもほとんどクリと同じ大きさになって、2羽で並んで止まり木に止まっていたりするが、チビは一番下の止まり木までしか行けない。それにまだフゴの中が好きなようで、1羽だけでよく寝ている。それでも羽毛は桜文鳥らしい色になってきたから、夫が無理に食べさせている効果がでているようだ。
 ヒナたちに食べさせたあと、手の上にのせてなでてやり、そのまま手を上下して、バサバサと羽ばたきの練習をさせる。クリとマミは2、3日前から少し飛べるようになったものの、そうやってやると、手の上でうれしそうに羽ばたく。特に、チビにこの練習をさせたいと思うけど、チビは、あまり羽ばたかないで、面倒そうだ。
 このバサバサの羽ばたき運動は、事故以来飛べなくなったフー(6歳半)のために、ときどきやっている運動だけど、ヒナのこの羽ばたき運動に刺激されてか、フーもこれをするときには、気張っている。やはり負けまいと思うのかもしれない。この調子で練習してフーもまた飛べるようになるといいと思うけど、あやさんの手に伝わる感触は、ヒナたちとフーではだいぶ違う。フーは重いのだ。
 ヒナたちは、遅れているチビでも、あと1週間もすれば飛べるようになるだろうけど、フーのこの重い体を舞い上がらせるには、かなりの力が必要だろう。 (つづく)