2016年8月30日火曜日

21.あれ? パピがいない

 きのうの夕方のことだ。外から帰った夫が文鳥たちを鳥かごに戻そうとしていった。
「きょうは、みんな、ばかにはしゃいでいるな。チーまでまだ鳥かごに戻ってない」
 夫は騒ぎまくる文鳥たちに手を焼いているようだった。
「さっきまで静かだったから、昼寝から覚めて元気なんじゃないの?」
 あやさんがそういうと夫もそうかと思ったようだったけれど、そのうちに、
「パピのところにクリとココが入っている」といい、
「パピがいないぞ。あれ? どこにもいない」と騒ぎ出した。
 カーテンレールの上にいたと思ったのは、同じシナモン文鳥のミーで、額の上にいるのも、ほかの文鳥たちばかり。
「でも、 さっきパピは自分の鳥かごでえさを食べていたけど?」と不思議に思って、あやさんの部屋や洗面所をさがすものの、パピの姿はない。
「どこかに落ちてしまって出られないのかも。もしや?」という気がして、チーの鳥かごの横にある電話代の下にもぐって、花瓶やスタンドをどけると、パピが飛び出してきた。
 飛び方の下手なパピはいつも隣のチーの鳥かごに止まってから自分のところに入っている。それが、うす暗くなっていたかで、チーの鳥かごに止まりそこなったのだろう。パピは少し目も悪くなっているかもしれない。
 パピが無事でホッとしたものの、こんどはなかなか自分の鳥かごに戻れない。すると、ココが夫の手に乗ってパピを誘った。それでもパピが手に乗れないでいると、こんどはココが鳥かごに入って、パピを誘った。感心なことにココはなかなかよくパピの面倒を見ている。パピもココにつられてようやく鳥かごにもどるが、そのあと、ココは鳥かごから出てしまった。そして、
「ココは、今夜はクリの鳥かごに入ったぞ」と夫がいった。
 文鳥たちがなかなか自分の鳥かごに戻らないで騒いでいたのは、パピが落ちてしまったことを知らせたかったからだろう。特にユウとトビは電話代の上の巻き上げカーテンに何度も来ていたから、パピの落ちた場所を知っていたのだはないか。チーまでが珍しくいつまでも鳥かごに戻らなかったのも、やはりパピのことを気にしていたからだろう。久しぶりのハプニングだったけど、みんなけっこう仲間思いなんだとわかってうれしかった。

2016年8月26日金曜日

20、チーも7歳

 シナモン文鳥のチーがもらわれてきたとき生後半年ということだった。正確な生年月日はわからないが、8月末に生まれたことになるので、すでに家にいた白文鳥のフーと同じ日を誕生日とした。フーもペットショップからきたから正確な誕生日ではないが、8月末に生まれたと聞いていたので、8月28日に決めていた。
 もしかしたら本当に誕生日が同じ日だったかもしれないと思えるほど、チーはフーに夢中になってしまった。けれどもフーはすでにパピと一緒になっていて、チーは相手にされなかった。元々、チーはピポの相手に迎えたというのに、しばらくピポとはケンカばかりしていた。白文鳥のメスとシナモン文鳥のオスという2組のカップルを思い描いていたあやさんたちは戸惑った。
 それでもそのうちにピポの気が変わって、チーはピポと一緒になった。賢いピポは個性的なチーをうまく操縦して4羽の子供を育て、曾孫まで持った。チーはピポと暮らして幸せだったと思う。
 ところが去年の11月、ピポが突然いなくなってしまった。ふたりでだいぶ探したけれどピポの消息はわからないまま。でも、チーはまだピポを待っているように見える。
 先日、あやさんの腕で遊んでいたチーに
「チーちゃん、もう、ピポのことはあきらめたら。ほかの女の子もいるし」といったら、胸を思い切りつつかれた。やはり、こちらのいっていることがわかるらしい。鳥かごがきれいになって夫が新しいえさを入れると、チーはさっさとピンク色の自分の鳥かごに戻っていった。そしてブランコに乗ってさびしそうにしている老齢のチー。気の毒だけどしょうがない。
(ピンクの鳥かごにいるチー)

(カーテンの上のミーを追い払おうとしているメグとラン)

2016年8月21日日曜日

19、文鳥さんも暑いのね

 暑いせいか、毎日文鳥たちの水浴びは盛んだ。相変わらず水道の蛇口にきて手のひらのプールで水浴びをしているのは、マイとルミの夫婦と若いスーだけど、スーは、独りで浴びてもつまらないのか、マイたちの水浴びの邪魔をする。一緒に水に入ろうとして、そのたびにマイに追い払われているが、なかなかしつこい。
 スーはオスだけれど、先輩のマイのことが好きらしく、マイが先にひとりで浴びているところに入ろうとする。マイは妻のルミが入ってくるのを待っていて、スーがくると、怒って追い払う。夫婦はタックルを組んでいて、自分たち以外のものに何かを譲ったりはしない。
 白文鳥のメグとクリーム文鳥のランの夫婦も最近では仲睦まじくて、2羽をからかいにくるミーを共同して攻撃したりしている。ミーはメグたちが鳥かごに入っていると、鳥かごの外から嫌がらせをしているようで、そんなとき鳥かご内のメグとランが怒って唸っている。
 夫の話では、この前などメグとランが、巻き上げカーテンのところでミーを攻撃していたらしい。ミーの嫌がらせに対する復讐のようだけど、あの〝ランの反撃〟の1件以来、ミーの心はランから離れないらしい。やたら相手の気持ちをもてあそぶと、とんでもなくややこしいことになってしまうようだ。元はといえばメグとランが悪いのだけれど、ランのストーカーと化したミーの気持ちはなかなかほかには向かないようだ。それでもミーにも進歩があって、自分の鳥かごに夫の手に乗って戻るようになった。
 ところで、ココとクリ、そしてパピの関係だけど、以前ほど規則正しくはないものの、相変わらずココがクリの鳥かごとパピのところを行き来している。ココの中では両方とも大事なのだろう。
 先日、ココとクリがユウとトビの鳥かごにいたのを間違えて、あやさんがとびらを閉めてしまった。何しろ、黒っぽいのと白っぽいのがユウとトビの鳥かごにいれば、当然、姉妹が入っていると思う。
 そのうち夫が気付いたが、ユウとトビの入るところがないので、この姉妹はパピのいる鳥かごに入った。こういうとき、いつもトビとユウ姉妹は一緒で、離れないから、パピの鳥かごは3羽になった。
 パピは入ってきたのがココではなかったから、あまり歓迎できないようすで少し追い回していたけれど、就寝の時刻も近かったので、そのまま朝を迎えた。
 ココがトビたちの鳥かごに入るにはそれなりの理由があって、以前に姉のナナと暮らしていたのはこの場所の鳥かごだった。だからいまでもそこは自分の場所のように思っているのかもしれない。でも、こうみんながココにかき回されては迷惑だ。ピポもいなくなってしまったいま、姉のナナの後ばかり追って育ったココがメスの中の最年長となったけど、子育てもしてない彼女にリーダーとしての資質を求めても無理かもしれない。とにかくココにとってはやっと巡ってきた春なのだから、しばらく大目に見ることにしよう。

2016年8月12日金曜日

18、文鳥さんの好きな服

 あやさんちではいつも、ふたりともパッとしない服装で過ごしている。夫などはパジャマの部屋着だったりして、そのままでは外に出られない。あやさんは着古した淡い色のブラウスを回して着ていて、やはりそのまま外出するのは憚られる。それもこれもほとんど文鳥たちのためだけれど、考えてみれば家の中では着られない服も多い。
 たまにあやさんが赤っぽい派手な服を着たりすると文鳥たちは近寄らない。赤っぽい色や縦じまのはっきりした服は苦手らしい。
 ただ、赤茶色でも彼らがお気に入りの服がある。よく見るときれいな枯葉がいくつも折り重なったような模様になっていて、小鳥の巣のようでもあり、、やさしい自然界を思わせるのかもしれない。
 あやさんの服で彼らがいちばんいやがるのが、黒地に白っぽい大きな花が模様になっているブラウスで、うっかりこれを着て鳥かごのそばに行くと大変。みんな鳥かごの中でバサバサ暴れ回って、いやがる。恐いのかもしれない。あわてて着替えることになるけれど、黒っぽいものは総じてあまり好きではないようだ。
 けれども黒ならどれでもダメ、というわけでもないらしいから、ものによってはカラスを思わせるとか、何かいやなものを感じさせるのかもしれない。
 文鳥たちはけっこうふたりの服装に敏感で、外出着になるとわかるらしく、寄ってこない。外から帰ったあやさんが、着替えないで忙しく水浴びをさせようとすると、マイなどは飛んできてもユウターンしていってしまう。あやさんの服をよごしては悪いと思っているのか、それとも本当にいやなのかはわからないけれど、とにかくその反応ははっきりしていて、着替えていないことにこちらが気づかされたりする。
 何しろ1羽が恐がると、みんなが同じように恐がるから面倒だ。

2016年8月5日金曜日

17、ピンクの鳥かご、その後

 ココ(桜文鳥・メス)のことを考えてクリ(クリーム文鳥・オス)の鳥かごを大きいものに取り換えたけど、ココはピンク色が気に入らないのか、そこに入ったのは1度だけで、その後、夜はパピのところに入っていた。ピンクの新しい鳥かごは広くて気持ちよさそうに見えるけど、居心地が悪いのだろうか?もし、鳥かごのためにココがクリから離れてしまったとしたら、クリに申し訳ない。やはりクリも落ち着かないようすで、新しい鳥かごになじめないようだった。
「ココは、もう、クリと別れてパピ(シナモン文鳥・オス)のところに戻ったのかしら」
 あやさんがそういうと、夫も頭を抱えているようだった。
「いや、昼間はクリとココが一緒に、よくトビ(白文鳥・メス)とユウ(桜文鳥・メス)の鳥かごに入っているよ。やっぱりピンクの鳥かごにしたのがまずかったかな。元の鳥かごに戻すしかないか…」
 夫は決して安くない鳥かごを自分の小遣いで買ったのだから、そう簡単にピンクの鳥かごを無駄にしたくないはず。けれどもココとクリに歓迎されなければしょうがない。それから数日たってもココは夜になるとパピのところに入っていた。
 このまま元のサヤに収まるのかと思っていたら、しばらくして夫がいった。
「クリの鳥かごとチーの鳥かごを交換しようと思うんだ」
 チーなら新しいものをいやがらないから、多分ピンクの鳥かごでも大丈夫だろうと考えたらしい。そこで早速、止まり木やツボ巣を外して、鳥かごだけを交換した。
 すると案の定、チーはピンクの鳥かごになっても文句はなさそうで、むしろ新しいので喜んでいるふうでもあった。
 こうして、ピンクの鳥かごはチーのものになり、ココはといえば、また1日交代でクリの鳥かごでも寝るようになった。
 それにしてもパピとクリが表立ってケンカをしないのは、ココが両者に気を遣っているからだろうか。ココちゃん、ホントにご苦労さん。