2016年10月25日火曜日

29、文鳥さんの考え

 桜文鳥のココは、もうすっかりクリーム文鳥のクリのところに居ついている。そして、ココの父親のパピの鳥かごにときどき入っているのは、最近パピと仲良くなったやはり桜文鳥のユウだ。ユウはトビが寂しがるせいか、パピのところに泊まったり元の鳥かごでトビと朝を迎えたりと、2つの鳥かごを行ったり来たりしている。そんななか、夫がいった。
「あれ、これはユウじゃなくココか。パピの鳥かごに入ってえさを食べている」
 また、ややこしいことにならなければいいけどと、あやさんが心配していると、ココは間もなくパピの鳥かごを出てクリのところに戻った。
「ココはパピのところを自分の鳥かごみたいに思っているようだ」と夫がいったように、もうココの気持ちがパピに向くことはなさそうだけれど、どうも文鳥には自分のところのえさは大事にとっておきたいという考えがあるようだ。
 クリーム文鳥のメスのランも昨夜、久しぶりに兄弟文鳥のミーの鳥かごに入った。ひとつには夫の白文鳥のメグが自分の姉に当たるやはり白文鳥のトビをまた追いかけだしたこともあってだろうけど、ランはミーと一緒に鳥かごに入って、ひたすらえさを食べていた。そしておなかが満ちたころ、鳥かごから出せとばかりに暴れた。夫が鳥かごを開けて、ランは結局メグのところに戻ったものの、これではミーがあきらめるどころか、ますますランの気を引こうとするようになってしまう。困ったものだと思うと同時に、思い当たるのは、この時期、とくにメス文鳥はほかの鳥かごのえさを食べたりしている。産卵にいい季節を迎えておなかが空くので、なるべく自分の鳥かごのえさをとっておきたいと思うのだろうか。だからといって、毎日換えるえさがしっかり減っているわけでもないのだけれど。

2016年10月18日火曜日

28、クリーム文鳥ランの作戦

 白文鳥のメグとクリーム文鳥のランの夫婦は、最近ではすっかり仲良く暮らしているが、ランと一緒に生まれたシナモン文鳥のミーが、いまでもランに気があるようで、自分の鳥かごに戻らないでメグとランの鳥かごの上に乗ったりわきに止まったりして、ときどきいやがらせをしている。メグが怒って鳥かごの中から唸っていて、ミーのいやがらせは執拗だ。
 ミーは夕方になってもなかなか自分の鳥かごに戻らないから、次の日には放鳥してもらえなかったりもするけど、いっこうにランへのストーカー行為は治まらない。
 そんななか、またランがミーと一緒に鳥かごに入った。
「きょうはランがミーのところに入っているぞ」と夫がいうので、見るとランがミーの鳥かごのえさを食べていて、メグはまだ鳥かごに戻らずにいた。
「また、メグがトビに気を向けたのかしら」とあやさんが心配していると、夫が、
「そうか、わかった」といって、ミーの鳥かごから出たがっているランを出した。するとランはそのまま自分の鳥かごに行き、メグと一緒に入った。
「ケンカしたわけじゃないの?」
 不思議がるあやさんに夫がいう。
「ランは利口だな」
「どういうこと?」とあやさんにはよくわからない。夫の話では、ランがミーの鳥かごに入ったのは、いつまでも自分たちの鳥かごの周りでいやがらせをするミーを早く鳥かごに戻してしまうためで、それで自分がいったんミーのところに入ったというのだ。たしかにその後もメグとランは仲良くしているようだけど、それが本当なら、ランはなんと賢いのだろう。
 (写真はのぞき見をするミー)

2016年10月11日火曜日

27、文鳥パピの新しい相手

 父親のパピと若いオス文鳥のクリとの間を行き来していた桜文鳥のココだけど、ようやくクリのところに定着したようだ。
 パピは寂しそうだったものの、もうココを呼ばなくなったから、すっかりあきらめたらしい。
 そんなパピの鳥かごに、同じ桜文鳥のユウが2晩続けて泊まった。トビのほうは鳥かごにひとり残されたわけだけど、いつも一緒にいる2羽が別れて眠ることは珍しい。
 最初の朝は、布を外すとユウとトビが盛んに呼び合っていたものの、2日目には割合静かだったから、ユウはパピのところに落ち着く気になったのかもしれない。
 ところが3日目になると様相が変わった、パピの鳥かごにココが居座ってしまったのだ。ユウはいつまでも入れずにトビと飛び回っていた。そのうちに夫がパピのところからココを出したので、ココはクリのところに戻ったものの、結局、ユウは元通りにトビのいる自分の鳥かごに入り、パピはまたひとりぼっち。
「ココは欲張りだな」と夫がいい。あやさんはココを叱る。文鳥たちはよくほかの鳥かごに入ってえさを食べたりしているが、自分のものはなるべく減らさないでストックしておきたいようだ。ココはパピのところも自分用に押さえておきたかったのかもしれない。ココらしいといえばそうなのだけれど、せっかくユウがトビと離れてパピのところへ入ったというのに困ったものだ。
 次の日、みんなが鳥かごに戻ったとき、ユウはまたパピのところに入った。鳥かごに戻らずに遊んでいたのは、ひとりになりたくないトビ。それに若いオスのスーとミー。いつまでも遊んでいたものの、ミーは先日、鳥かごになかなか戻らなかったため翌日には放鳥してもらえなかったことを思い出したのか、そのうち自分で鳥かごに戻った。こんなときは大げさにミーをほめるものの、スーとトビはまだ逃げ回っていた。それでもやがて夫が鳥かごに戻したらしく、就寝時間には静かになった。
 そして朝を迎えて、あやさんがパピの鳥かごの布を外すと、パピだけがいた。
「あら、ユウちゃんは?」
 夫にきくと、あのままではトビが鳥かごに入らないので、パピの鳥かごを開けてユウを出したのだという。結局、元の木阿弥で、長く暮らした姉妹を離すのは難しそうだ。
 次の晩もユウはトビと一緒だった。あやさんは、やっぱりダメかとがっかりしていたけれど、その翌晩にはまたユウがパピと一緒で、朝、布を恥ずすと仲良くスカイカフェに乗っていた。このままユウがパピのところに居つけばいいと思っていたのに、今夜はまた、トビとユウが一緒だったから、果たしてこれからどうなることやら。

2016年10月5日水曜日

26.文鳥ココの思い

 数日前のことだ。夕方、文鳥たちを鳥かごに戻した夫がいった。
「きょうは、ココがパピの鳥かごに入ったぞ」
「あら、もうすっかりクリのところに居ついたと思ったのに、どうしたのかしら」と、あやさんは不思議でしょうがない。
 放鳥時にはクリと一緒に床の上を歩いていたし、あれ以来、いつもクリの鳥かごに戻っている。
 もしかしたら、クリとケンカをしたのかもしれないと、クリの様子をきくと、
「ん、クリはおとなしくひとりで入ったよ」と夫。クリは平然としていて、慌ててココを呼んでいるふうでもないから、仲違いしたわけでもなさそうだ。
「たまにはパピのところに行かないと悪いと思ったのかしら」と、あやさんは考えた。
 ところが鳥かごに布をかけるときになって夫がいった。
「ココはクリのところに戻ったぞ」
「あら、せっかくパピのところに入ったのに、パピが可哀想だわ」
 あやさんがそういうと、夫がいいわけをした。
「ココがパピの鳥かごから出たがったんだ」
「じゃあ、なぜ、パピのところに入ったのかしら」
「どうも、パピが鳥かごに戻りやすいように、一緒に入ったみたいなんだな。そのままいるつもりはなかったんだ」
 夫のいうとおりだとしたら、ココは優しいのかもしれない。でも、パピのことを考えたらどうなのだろう。パピはがっかりしてさっさとツボ巣に入ってしまった。パピもクリも妻に先立たれた身だから、ココの役目も大変といえば大変。

つぎの日の午前中。パピが鳥かごの中でいい声で盛んに鳴いていた。
「ホッホッ、ホチョチョンホチョチョン」
 居間はにぎやかで、「チュンチュンチュン」という別の鳴き声もする。行ってみると、ココがパピの声に応えて鳴いていた。いったいなんていっていたのだろう。もしかしたら、
「もう、こっちって決めたのよ。お父さん、わたしのこと諦めて、しっかりしてよ」なんていっていたのかな?