2020年3月22日日曜日

(8)文鳥たちの春



 春分の日が過ぎて、いよいよ春めいてきた。例年より早い開花という桜のたよりも聞こえてくる。本来なら明るく活気ある季節なのに、日本だけでなく世界中が新型コロナウイルスの猛威で大変なことになっている。

とはいえ、あやさんちでは、今のところ、いつもながらの文鳥たちとの平和な生活が続いている。

 10歳7か月のチーは、相変わらず食べて眠るだけの生活だけれど、まだ食欲はちゃんとしている。ときどきツボ巣の下に潜り込んでいて、ハンカチを丸めたツボ巣を支えるための棒状の布の陰から尾羽をのぞかしている、まさに、頭隠して尻隠さずの格好だ。聞くところによると、なんでもだちょーは、怖いものを見ないようにと、頭だけを土の中に隠して隠れたような気になっているらしいが、チーも頭を隠していると安心できるということなのか。

 スーは、まだ独りぼっちなので、鳥かごから出ると、チーにえさを食べさせているあやさんの足や腕に止ったりしている。ほかの3つのカップルも、柔らかな陽光の射し込む居間で、それぞれ交代で卵を温めたり水浴びをしたりしている。そろそろ新しい命が生まれないものかと願うけれど、果たして結果はどうなるか。

2020年3月11日水曜日

(7)文鳥のカップル



 今年もまた3月11日がやってきた。未曽有の甚大な被害をもたらした東日本大震災から9年経ったことになる。あの恐ろしい揺れた日々を知っている文鳥は、もうチーだけになってしまった。復興はまだまだで、被災者の多くはいまだに大きな負債を背負ったままでいるようだ。もう少し何とかならないものかと、この国の優しくない政治に憎しみを新たにする。

 ところでチーは今月末には10歳7か月になるけれど、あの9年前のことを覚えているだろうか。そして、5年前にいなくなってしまった妻のピポのことを覚えているだろうか。文鳥の記憶はどれほどか知らないが、チーが少なくとも1年以上、ピポを想って寂しそうにしていたことは確かだ。そして、スーも先に逝ってしまった妻のトビを想っていまだにさびしそにしている。鳥かごから出ても独りだから、チーにえさを食べさせているあやさんのところに来て足に乗ったり肩に止ったりすることが多い。チーもそうだった。マイを抱いてえさを食べさせているあやさんの背中に乗って丸まったりしていた。

 文鳥は、隣の鳥かごのものには、結構意地が悪いような行動をするが、自分のパートナには、仲間としての特別の思いがあるようで、一緒になると、年々仲睦まじくなっていく。そういう意味では非常にセクト的な生き物のような気がする。

 

  写真は10歳半を過ぎたシナモン文鳥のチー