2018年11月21日水曜日

(10)形はスマートなんだけど


 
  パソコンはその後、新しいものになった。息子に買ってもらったウインドウズ10をいま使っている。おかげで悪夢のようなアップデートの際のフリーズや画面の変化などに悩まされることはなくなったが、使い慣れるには時間がかかった。そしてようやく普通に使えるようになったころ、また別の新しいものに苦労している。

 ケイタイ電話を変えたのだ。本当はこのままガラケイのケイタイを使っていたかったのだが、この11月と12月に解約すれば「しばり」とかいうものから抜けられるとかで、この際電話会社を映って料金を安くするのだという話になった。何でもガラケイは、2年後にはなくなるから、その後はみんなスマホになるんだという。そんなこと、だれが決めたの? と、大いに不満だけれど、私が文句をいったからとて、どうなるものでもない。このさい、前向きに考えてスマホにした。。すると、やはり、大変なことになった。

新しいケイタイ電話となったスマホはアイホンだが薄くて格好がいい。これまでのガラケイと比べると見た目からして別次元。新しいものを手に入れたうれしさはあった。

 しかし、突起したボタンがないというのは、目の悪い者にとってなんと不便なことか。これは設定次第で視覚障碍者でも使えることになっているようだが、間違って触れると、かってに電話がかかってしまったりする。相手から返信があり、そのことがわかるのだけど、これまでのガラケイなら決まった場所にある赤いボタンを押さない限りそんなことは起きなかった。画面に出てくるキーボードも小さくて正確に文字をとらえてうつことも難しい。もうこれは、視覚障碍者はもちろん、老人の震える指先ではどうにもならない。宝の持ち腐れだ。

 そう思っていじってみていたら、このスマートさがとても冷たいものに感じられてきた。

「こんなのちっとも格好よくない。だって不便」

いやな気分になってきた。これはすべすべのプラスチック製品を初めて見たときにきれいだと思い、その後に好きでなくなったときの気持ちに似ている。

 やはり凸凹のない冷たいものには、いくらそれがスマートでも感心しない。愛情がわかないのだ。パソコンのキーボードだって「f」と「j」にちゃんとポッチがあり、電話機やリモコンの「5」にもポッチがついていて、その上が「2」で下が「8」だと見えなくてもわかるようになっている。これが生活の知恵である。

つまり、いまのスマホは不親切で、視覚障碍者には突起が必要で、この機能美を追求した物体は視覚障碍者には適さないと思った。、あまり年寄りには好まれないだろう。

 もっと温かみのある凸凹の使いやすいスマホになれば、それがやがて普及することだろう。このままではまったくの仕事の機器にしか思えない。こんなものに1日中とらわれていたら、あまり意味のない時間ばかりが費やされ人間はおかしくなってしまいかねない。そう思わせる冷たさがそこにあり、私の場合、ただの電話を受け取るだけのシロモノとなってしまいそうだ。

 それでもときどき触っていると、何かしゃべるから、その点は少しかわいらしい。

2018年11月13日火曜日

22、ボク、マイだよ


   白文鳥でるみの夫のマイだよ。もう8歳半になったんだ。すっかりおじいさんになってしまって、片足が具合が悪い。だから毎日、大変なんだ。

 つまり、鳥かぼの中を自由に動けなくなってしまってさ。おなかがすいたらツボ巣から鳥かごの下に飛び降りるんだ。近くのスカイカフェに飛び移ってえさを食べるのが難しいわけで、ママが下に用意してくれた平べったいえさ入れのえさを食べることにしている。だけどツボ巣から落ちてからも大変で、なんとかその新聞紙の上をすべるようにしてえさに近づいて行き、それからえさ入れの上におおいかぶさってえさを食べる。食べ終わったら鳥かごの前のほうのフチにつかまっている。

 そのうちにママかパパが気が付いてボクを抱き上げて、スカイカフェの水を飲ませてくれ、それからえさの入ったスカイカフェに入れてくれる。

 そんなときボクは、ママの差し出してくれた手をちょっとカムんだ。それはお礼のあいさつのつもりだけど、ママにはちゃんとわかっているのかな。ときどき「イタイよ」なんていってる。そしてぼっくはお腹がいっぱいになって、ツボ巣にもどるんだ。そこからなら自分で戻れるはずなんだけど、たまに、また下におちちゃって、しばらく下にいることもある。そんなとき、るみが心配してくれて、ボクの様子を見ているんだ。まあ、そのうちにはママかパパが気が付いてツボ巣に戻してもらえるけどね。ボクがツボ巣に戻るとるみがうれしそうな声を出して迎えてくれる。

 水浴びはママの手の中でして、それから抱いてえさを食べさせてくれる。だけど、ママがいないときは、ボクはソファーの上に放っておかれるんだ。パパはその間、みんなの鳥かごの掃除をしているから、ボクの面倒はみられないから仕方ないんだよ。だから、ボクはあまりママに出かけてほしくない。お昼寝だってママに抱かれてするほうが快適だもん。

 そんなわけでボクはなんとかやっているけど、年上のチーのヤツがうらやましそうにママの肩にやってくる。でも、あっちはボクより元気だからな。チーとはもう8年半も一緒にいることになるんだな。昔はよくケンカしたもんだ。なつかしいなあ。