2020年6月24日水曜日

(14) 梅雨空の下で



 夏至も過ぎて最長老のシナモン文鳥のチーちゃんも10歳10か月になった。もうすっかりヨボヨボした老鳥だけれど、えさの入ったお皿に首を突っ込んで自分で食べることもできる。朝起きてしばらくして水色のビニールマットの上を歩く音が聞こえてくると、きょうもチーが元気だとわかるので、安心するこの頃だけれど、チーがこんなに長生きなのは、毎日抱いて食べさせるときになめさせているリンゴじゅースのおかげもあるのではないかと思っている。リンゴジュースを与えているのは青菜が食べられなくなったことがきっかけで、チーは、その甘いジュースが大好きなのである。
 マイにも少しなめさせたことがあったが、マイは水のほうがいいようだった。
 長く生きるのもそれなりに大変なのだろうが、チーには無事に11歳のお誕生日を迎えて欲しいと思っている。妻のピポがいなくなってから、長い間寂しい思いをしていたようだったから、いまでもピポを待っているのかもしれない。でも、ピポが生きていればもうすぐ11歳になるはずだから、ピポはとっくに天国へ行ってしまって、あの世でチーを待っているだろう。
 最近、妻のランを亡くしたメグは、まだ換羽の中にいる。見るからにみすぼらしい恰好で、それに加えて胸の羽が抜けている。夫が、
「メグはランがいなくなってしまたので寂しくって、自分で胸の毛を抜いているのではないか」と心配していたが、もしかしたら、そうかもしれない。文鳥たちは、見かけによらずなかなか繊細な神経の持ち主なのだから。

2020年6月4日木曜日

(13)メグがフランコに



 ランがいなくなってしまったことは、メグだけでなくほかの文鳥たちにもわかっているようだった。メグはもちろん寂しそうだったけれど、ランを捜して鳴くようなことはなかった。メグは7歳4か月になるから、ランがもう帰ってこないことがちゃんとわかるのだろう。ただ静かにブランコに乗っている。これまでは、そこがランのお気に入りの場所だった。ランがいるときには1つのブランコを彼女に譲っていたようだが、いまは遠慮なくポツンとブランコに止っている。
ランの死は兄弟のスーとミーにも衝撃だったようで、スーはトビを亡くしてランも死んでしまったので、本当に寂しそうだ。けれどもそれにもまして寂しそうなのがミーで、ランのいた隣の鳥かごばかりを眺めている。いまはモカという奥さんがいるミーだけど、以前はランを追いかけて、メグの鳥かごに嫌がらせばかりしていたミーだから、もしかしたら、メグ以上にショックを受けているのかもしれない。
 そんなランがいなくなったせいか、夫は文鳥たちを放鳥する順番を気にしなくてよくなった。相変わらず最年長のチー(10歳9か月)が最初に鳥かごから出て、水浴びなどさせてもらっているけれど、あとは、ほとんど一斉に放鳥されるようになったのだ。
 こうしてみると、やっぱり、クリーム文鳥のランは、この家で、けっこう華やかな存在だったようだ。