2023年9月22日金曜日

(十八) 鳥かごとメグ

 

 ミーが天国へ行ってしまってから3週間が過ぎたが、モカは相変わらずミーを呼んで時々鳴いている。一方、ピヨのほうは、いよいよあきらめたのかあまり鳴かなくなった。モカもあと2週間もすれば静かになるだろう。

居間には6つ鳥かごが置いてあり、使っているのは5つ。文鳥は5羽になってしまったので、丁度文鳥の数だけだけれど、スーとフユはペアでいっしょに入っているから、実際に寝床となっている鳥かごは4つである。残りの1つは鳥かご掃除のときにメグが一時的に

入っているもの。これらの鳥かごを夫は順番に洗ってプチプちを換えている。 おとといには最後に洗った鳥かごに二人がかりでプチプチを貼った。これは余分な鳥かごなので、もうプチプチで巻く必要はないと思ってきくと、

「いまメグが入っている鳥かごは水色だろ。メグは、あれは一時的なものだと思って我慢しているんだ」という。メグの元々の鳥かごはピンクなので、メグはそれじゃないと気に入らないのだという。

「前に、ランがいたとき、下が水色の鳥かごになったら、ランだけは入ったけれど、メグはいやがって入らなかったんだ。そのときは無理やりいれたけれど、そのあとちゃんと元通りのピンク色のものにもどしたら喜んで入っていた。だから、またピンクに戻してもらえると思っている」

 そういって、、夫はこの前新しく貼り替えたメグの鳥かごをピンクのものに置き換えた。気難しいメグのことだから、そんなこともあるかもしれない。

きれいになった鳥かごはいいけれど、新しいツボ巣では困ったことが起きた。メグがツボ巣の糸に足を引っかけてしまったのだ。気が付いてツボ巣ごとメグを鳥かごから出し、からまった爪を外した。そして、伸びているメグの爪に気づいた夫がメグを抑えて爪を切った。

すると、あやさんの恐れていたことが起きた。あれほど深くきらないようにと注意したのに、生返事の夫が騒ぎ出した。メグはおとなしくしているが、やっぱり切り過ぎてしまったのだ。出血してしまったから線香に火をつけてもってこいという。それで足の先を焼いて血を止めようというのだから野蛮な話だ。あやさんは気が進まないが線香に火を点けようとするけれど、マッチがしけていてなかなか点かない。そうこうしているうちに出血は治まって、熱い線香をちょっと付けたかどうかというところで何とかなった。

 メグは不愉快そうだったけれど、おとなしく鳥かごにもどった。爪を切ってやったので引っかかる心配はなくなったが、これだからみんな爪切りをいやがるのだろう。ちなみにスーやフユなどは自分で爪を固いものに充てて削っているようなので問題ない。文鳥によっていろいろだ。

2023年9月6日水曜日

(十七) さよならミーちゃん

 

 9月1日は関東大震災から100年目の日だった。その日の朝、ミーは天国へ行ってしまった。あやさんが気づいたのは鳥かごの下の紙を取り換えるときで、手前に引いたら、そこに不思議な塊が転がっていた。なんだかわからないまま手に取ってみてミーだと気づいた。。まだ少し暖かかったが、もう死んでいると思った。それでも慌てて抱きかかえて温めるものの、やはり反応はなかった。

 あっけない死だった。こんな風に死んでしまうなんて・・・。

 起きてきた夫に話すと、

「そういえば、昨日はあまり元気がなかった。リンゴジュースも飲まなかった」といった。ミーは1か月半前に天国へ行ってしまったクリの息子で、まだ8歳4か月。確かに年寄りだったけれど、急に鳥かごの床に転がって死んでしまったなんて、ショックだった。

 このところミーはほとんど鳥かごから外に出なかった。妻のモカも同様で、2羽は仲良く暮らしていた。7月の初めころ、珍しく鳥かごから飛び出したミーは、向かいにあるカーテンレールの上まで上がった。そのとき、

「ミーちゃん、ちゃんと飛べるんじゃないの」とあやさんがいうと、夫がいった。

「ミーは飛べるんだけれど、細かい動きがうまくできないから鳥かごに戻るのが難しいんだよ」鳥かごの入り口弐ついている止まり木にうまく止まれないらしい。いったん鳥かごの外側につかまってから、入り口に近づいて入るという。細かい動作が苦手になっている。そのうえ羽毛の色もシナモンのはっきりした色が薄くなって見るからに年寄りっぽかった。夫はパーキンソンのような老人性の病気かもしれないといっていたから、そんなこともあって、少し早く寿命が尽きたのかもしれない。仕方のないことだ。また、モカがピヨのように夫のミーをときどき呼んで鳴いている。

 ミーはまるでいたずら小僧のように一緒に生まれたランを追いかけては、よくこず枯れていた。ランにだけでなく、あやさんにも叱られていたけれど、なかなか可愛い昔はすばしっこい文鳥だった。モカと一緒になってからは仲良く暮らして、目が悪くなったモカの面倒を優しくみていた。おとといミーはクリと同じように線香の空き箱に納められて庭にあるお墓のクリのそばに埋められた。ますます寂しくなっていく。