2020年9月24日木曜日

(20)文鳥の爪

 


 文鳥たちの爪は細くて尖っているので、時々短くしてやらないと危険だ。ツボ巣をからげている糸などに引っかかって逆さ吊りになり大怪我をしてしまうこともある。

 そこで夫がたまに文鳥を捕まえて、それぞれの爪を切ってやることになるのだが、文鳥たちはそれを喜ばない。ギュッと抑えられて動けずにいる間に爪切りが終わり、やっとの思いで逃げ出すと、すぐには夫のそばには寄り付かない。そしてしばらくはそれを憶えていて、夫が捕まえようとしても逃げてしまう。

 爪切りは結構難しく、あまりちゃんと切ろうとすると、つい深くまで切ってしまい出血したりする。そんなときは、慌てて火をつけた線香を仏壇から持ってきて、出血箇所を焼くことになるが、それは当の文鳥はもちろん、あやさんにとっても辛い瞬間になる。けれども文鳥は声を出さない。あまりの痛さにびっくりしているのかどうかわからないけれど、そういう目には誰だって合いたくない。

 だから、夫が文鳥たちの爪を切るときは、あやさんも文鳥以上に緊張する。そして、

「ちょっと切ればいいのよ。切りすぎないで」などと、騒いてしまうのだ。

 それでも中には、そんな面倒をかけない文鳥もいる。これまで一

度も爪を切ってやったことのない文鳥がピポだった。ピポは、現在11歳1か月になるチーの妻で6歳のときにいなくなってしまった白文鳥だが、全く世話の焼けない子だった。ピポは自軍で爪を短くしていた。嘴で噛んで短く削っていたのである。だから、ピポが手に止まるとギザギザした爪が手に当たって痛い感じがした。そして、ピポの子孫のクリもスーも自分で爪を短くしている。そういえばクリの妻のピヨも見様見真似でで覚えたのか、やはり爪がギザギザしている。この方がお互いにストレスがなくていいと思うけれど、マイのように爪が内側に曲がってしまっている場合は、自分で短くするのは難しい。

けれども、そうでないのになぜか夫に爪を切ってもらっているままの文鳥もいるから面白い。

2020年9月11日金曜日

(19)毎日が文鳥さん

 9月になっても暑い日が続いている。一時よりは減少傾向にあるとはいえ、まだまだコロナ感染は治まりそうにない。外出も控えめになり家にいることが多くなっている。ふつうならこんな生活が続いたら本当にうんざりしてしまうだろうと思うけど、それほどでもないのは、文鳥たちのお陰かもしれない。

 彼らと過ごしていると、一日があっという間に過ぎてしまう。ときには一緒に居眠りをして、全く平和な光景が広がる。

 毎日の鳥かご掃除や餌かえなど、面倒に思うこともあるけれど、それによって生活のリズムがうまくいっているのは疑いない。そう考えると、こちらが彼らの世話をしているだけではなく、けっこう彼らの世話になっていて、日々まあまあに過ごせていることに気づく。

 なにしろペットといると自然に優しい気持ちになれるから、そんないいことはない。世話が面倒に思えても、彼らの喜ぶ様子を見ると、やはりあまり手抜きはできない。それに彼らが言葉で表現できない以上、どうしても気を配ってやらなければならない。そして彼らはこちらの気持ちを裏切らないから、そこに信頼が生まれる。なんと幸福なことだろう。面倒なことは、とてもいいことなのかもしれない。そんなことを思う文鳥生活が続いている。