2017年3月31日金曜日

(13)ココ、病院へ

 おとといの水曜日のことだ。
 午後の放鳥時に夫が気がついた。
「ココが卵管脱を起こしているぞ」
 赤いつぶれた風船のようなものがお尻から垂れ下がっている。夫が慌てて病院に電話をすると、緊急を要するから診てくれるという。急いで仕度をしてココを連れて行こうとしたら、ココは逃げ回って鳥かごに戻せない。それでも何とか夫がえさを手におびき寄せて捕まえ、鳥かごに入れた。そして、そのまま車に積んで高速道路を1時間以上走って、約束の時刻より30分も遅れて病院に到着した。途中で電話をしておいたので休診時間だったにもかかわらず診てもらえた。
 すぐに手術が必要だという。いつから脱管していたかと聞かれたが、はっきりとはわからない。きのうは見なかったと思うものの確証はない。
 ココは若いクリと一緒になったためか、いまでも卵を産んでいる。ほとんどちゃんとした卵ではないし、数も少ないけれど6歳9か月の身で頑張っているのだ。そんな年齢ではほかのメスはだれも卵を産まなかったのに。
 手術は短時間で終わった。ココは鳥かごの下でぐったりしていたものの、車に乗り込むと、床にまいたえさを食べだした。そして、そのうちに低い止まり木に止まっていた。あとはうまくフンが出るかが心配だ。その日は水飲み嘔気に薬を入れて、クリとは別の鳥かごで寝かした。
 翌日、ココのフンがあったので一安心。あとは来週、抜糸に連れて行けば大丈夫だろう。
  桜文鳥のココは、2年前(4月2日)に腫瘍が元で死んでしまったナナの姉妹。2羽は1日違いで生まれて見分けのつきにくいほど見た目はよく似ていた。
 ナナの方がお姉さんぽく行動していたけれど、あのときのナナは本当に可哀想だった。そう思いながら天国のナナにココのことを守ってほしいと祈った。

 きょう、ココはクリと飛んでいる。いまのところ心配なさそうだ。
「ナナちゃん、ありがとう」

 

2017年3月22日水曜日

(12)チーの水浴び

 7歳半を過ぎたシナモン文鳥のチーは水浴びが好きで、長い間いつも、放鳥前には必ず水飲み容器に入ってカラカラと音を立てて水浴びをしていた。夜、寝る前にも、ときには朝にもカラカラと音を立てていた。一緒に暮らしていたピポも同じ水の二で浴びたから、毎日、鳥かごの下に敷いてある新聞紙を取り換えるときはびしょびしょで、金網の下のトレーにはたくさんの水が溜まっていた。そう、それほどチーは水浴びが好きなのに、手のひらのプールには入らなかった。そのため、ピポまで手のひらのプールに入ることはなくなった。それでもチーはたまに、蛇口のそばのあやさんの腕まではきていたから、本当は手のひらのプールに入ってみたかったのだろう。けれども、怖かった。ピポに威張っていたチーは、自分が臆病なところを見せたくなかったのか、そのうち、いっさい手のひらのプールには興味を示さなくなった。

 そんなチーの水浴びが最近、変化してきた。ピポがいなくなってからだ。いまでは鳥かごの新聞紙が濡れてないことが多い。それはチーが水浴びをしなくなったということではなく、この歳になって初めて手のひらのプールで水浴びをするようになったのである。放鳥後、あやさんが蛇口から水を出すと、チーが真っ先に飛んでくる。そして手のひらのプールで長々と浴びる。伸び伸びと羽ばたいて、たっぷりの水を飛ばすのは気持ちがいいだろう。しかもあやさんが歌う調子のいい伴奏までついている。勇気を出してひとたび手の中の水に入れば、快適な水浴びができることが、チーにもわかったようだ。
 とはいえ、手のひらのプールに入るのはチーだけではない。マイは足が変形しているので容器では浴びにくいため毎日、ルミと2羽できて浴びている。それにスーもくるから、プールの取り合いになる。
 だれが強いかといえば、先に飛んできたものだ。あとからきたものが、プールに入っているものを追いだそうとするけど、あやさんに叱られる。
 先日など、プールに入ろうとしたチーが、後からきたマイに追い出されてシンクに落ちた。あやさんが叱ると、マイは台の上に乗り、チーがあやさんの腕に戻った。そして、チーは得意そうに羽繕いを始めた。マイはそのまま少し見ていたけど、つまらなそうに飛んで行ってしまった。それからチーがゆうゆうとひとりで浴び、終わったのでマイを呼んだがもうこなかった。
 文鳥はプライドが高いから自分のほうが優位でないと面白くないらしい。
 それでも1時間後にはもう忘れてしまったのか、マイとルミが飛んできて元気に手のひらのプールで水浴びをした。スーはといえば、その前にソファーの上の水入れ容器で浴びたようで、ちょっとお愛想にプールに入っただけだった。

 

2017年3月15日水曜日

(11)ピヨちゃん5か月

 シルバー文鳥のピヨがきてから1か月が過ぎて、ピヨは生後5か月になった。新しい環境にもだいぶ慣れてきたようで、鳥かごの新聞紙を取り換えるときなど、あまり暴れなくなった。でも、まだ手には乗ってこないから、放鳥後に鳥かごに戻すときは面倒だ。相変わらず部屋を暗くして、動けなくなったところを夫が捕まえている。手に乗らないまでも、ミーのように自分で鳥かごに入れるようになると楽だけど、当分このままだろう。
 オスに比べてメスのほうが人に慣れにくいように思う。だれかと一緒の鳥かごで暮らすようになれば、いいのかもしれないけれど、なかなか人には寄ってこないし、手を出すと逃げてしまうというのは大変だ。
 それでも、ほかの鳥を見習って、あやさんのいるソファーのそでにきたこともあるから、そのうちには肩に止まるようにもなるかもしれない。
 ピヨの行動範囲は、まだ狭くて居間の中を飛び歩いているだけだから、放っておいてもあまり心配はない。声は大きく青菜などは毎日よく食べていて、体も大きい。そのうち予定通りにミーと仲良くなれば、自分で鳥かごに戻れるようになるだろうと期待している。いまのところはまだ日没が早いけど、だんだん日が長くなる。外が明るいと、カーテンを閉めても真っ暗にはならないから、近づくと逃げてしまう。そんなわけで、ピヨには早く自力で鳥かごに戻るようになってもらわないと困るのだ。

2017年3月7日火曜日

(10)よその文鳥

 先日、久しぶりに友人の家に行き、玄関で待っていると、居間にいる文鳥が大きな声で騒ぎだした。すると、彼女が、
「あら、人が来てこんなに鳴くなんて珍しいわね。ちょっと上がって待ってて」というので、彼女の仕度が整うまで家に上がって待つことになった。
 居間に入ると鳥かごが1つ置いてあり、その中に桜文鳥が1羽いて、さかんに何か言っている。鳥かごから出たいようだ。
「いいこね。これからお出かけだから出られないのよ」といっても、わからないのか、よけいに騒いでいる。友人が、
「ホントに珍しく騒いでいる。出してもだいじょうぶよ」といって、鳥かごの入り口を開けると、桜文鳥が飛び出した。とても、うれしそうだ。
「やっぱり、鳥が好きな人って、わかるのかしら」という。あやさんがキッチン近くに止まった文鳥に手を出すと、そっと指をかんだ。文鳥の甘噛みは親愛の情を表しているという。そのうちに手に乗ってきた。
「この子、うちの文鳥たちより、よくなついてくる」というと、友人がまた、
「こんなこと珍しいのよ。やっばり好きな人ってわかるんだわ」という。
「わたしに家の文鳥のにおいがついているのかもしれないわね」といって笑ったけれど、こんなに親しみをもって迎えられたのは初めて。友人によると、このように喜んでよその人を迎えたのも初めてらしいけど、2年くらい前にも1度会っているから、もしかしたら、それを覚えていたのだろうか。覚えていたというより、においがしたというほうが可能性がありそうだが、親しみを持って歓迎されるとまた会いたくなるから不思議なものだ。この可愛い元気な桜文鳥は、独り暮らしの友人の、日々の話し相手になっているのだろう。