2017年3月22日水曜日

(12)チーの水浴び

 7歳半を過ぎたシナモン文鳥のチーは水浴びが好きで、長い間いつも、放鳥前には必ず水飲み容器に入ってカラカラと音を立てて水浴びをしていた。夜、寝る前にも、ときには朝にもカラカラと音を立てていた。一緒に暮らしていたピポも同じ水の二で浴びたから、毎日、鳥かごの下に敷いてある新聞紙を取り換えるときはびしょびしょで、金網の下のトレーにはたくさんの水が溜まっていた。そう、それほどチーは水浴びが好きなのに、手のひらのプールには入らなかった。そのため、ピポまで手のひらのプールに入ることはなくなった。それでもチーはたまに、蛇口のそばのあやさんの腕まではきていたから、本当は手のひらのプールに入ってみたかったのだろう。けれども、怖かった。ピポに威張っていたチーは、自分が臆病なところを見せたくなかったのか、そのうち、いっさい手のひらのプールには興味を示さなくなった。

 そんなチーの水浴びが最近、変化してきた。ピポがいなくなってからだ。いまでは鳥かごの新聞紙が濡れてないことが多い。それはチーが水浴びをしなくなったということではなく、この歳になって初めて手のひらのプールで水浴びをするようになったのである。放鳥後、あやさんが蛇口から水を出すと、チーが真っ先に飛んでくる。そして手のひらのプールで長々と浴びる。伸び伸びと羽ばたいて、たっぷりの水を飛ばすのは気持ちがいいだろう。しかもあやさんが歌う調子のいい伴奏までついている。勇気を出してひとたび手の中の水に入れば、快適な水浴びができることが、チーにもわかったようだ。
 とはいえ、手のひらのプールに入るのはチーだけではない。マイは足が変形しているので容器では浴びにくいため毎日、ルミと2羽できて浴びている。それにスーもくるから、プールの取り合いになる。
 だれが強いかといえば、先に飛んできたものだ。あとからきたものが、プールに入っているものを追いだそうとするけど、あやさんに叱られる。
 先日など、プールに入ろうとしたチーが、後からきたマイに追い出されてシンクに落ちた。あやさんが叱ると、マイは台の上に乗り、チーがあやさんの腕に戻った。そして、チーは得意そうに羽繕いを始めた。マイはそのまま少し見ていたけど、つまらなそうに飛んで行ってしまった。それからチーがゆうゆうとひとりで浴び、終わったのでマイを呼んだがもうこなかった。
 文鳥はプライドが高いから自分のほうが優位でないと面白くないらしい。
 それでも1時間後にはもう忘れてしまったのか、マイとルミが飛んできて元気に手のひらのプールで水浴びをした。スーはといえば、その前にソファーの上の水入れ容器で浴びたようで、ちょっとお愛想にプールに入っただけだった。

 

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