2017年3月7日火曜日

(10)よその文鳥

 先日、久しぶりに友人の家に行き、玄関で待っていると、居間にいる文鳥が大きな声で騒ぎだした。すると、彼女が、
「あら、人が来てこんなに鳴くなんて珍しいわね。ちょっと上がって待ってて」というので、彼女の仕度が整うまで家に上がって待つことになった。
 居間に入ると鳥かごが1つ置いてあり、その中に桜文鳥が1羽いて、さかんに何か言っている。鳥かごから出たいようだ。
「いいこね。これからお出かけだから出られないのよ」といっても、わからないのか、よけいに騒いでいる。友人が、
「ホントに珍しく騒いでいる。出してもだいじょうぶよ」といって、鳥かごの入り口を開けると、桜文鳥が飛び出した。とても、うれしそうだ。
「やっぱり、鳥が好きな人って、わかるのかしら」という。あやさんがキッチン近くに止まった文鳥に手を出すと、そっと指をかんだ。文鳥の甘噛みは親愛の情を表しているという。そのうちに手に乗ってきた。
「この子、うちの文鳥たちより、よくなついてくる」というと、友人がまた、
「こんなこと珍しいのよ。やっばり好きな人ってわかるんだわ」という。
「わたしに家の文鳥のにおいがついているのかもしれないわね」といって笑ったけれど、こんなに親しみをもって迎えられたのは初めて。友人によると、このように喜んでよその人を迎えたのも初めてらしいけど、2年くらい前にも1度会っているから、もしかしたら、それを覚えていたのだろうか。覚えていたというより、においがしたというほうが可能性がありそうだが、親しみを持って歓迎されるとまた会いたくなるから不思議なものだ。この可愛い元気な桜文鳥は、独り暮らしの友人の、日々の話し相手になっているのだろう。

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