2018年1月29日月曜日

三、マイ、白文鳥だよ

 ボクは白文鳥のマイ。この家で、最初に生まれた文鳥なんだって。もうすぐ7歳9か月だから、おじいさんなんだけど、まだ父さんも生きているよ。父さんはパピで、もう飛べないけど、一応元気にしている。なんといっても2月には9歳だから、相当なおじいさんさ。
 この前、ボク、こわい思いをしたんだ。それというのもボクも飛び方がおぼつかなくなってきたせいだけど、元々、あまり足がよくないからな。それに、パパがいうには、「マイは、少し太りすぎ」だって。何しろ、この歳になると、食べることしか楽しみがないんだから、しょうがないよ。
それでボクは額縁の上に止まりそこなって裏側に落ちちゃったんだ。動こうにもはさまった状態で、どうにもならない。だれも気付いてくれないし……。
 そのうちパパの声が聞こえて、
「あれ、マイがいないな。カーテンにもぐって眠っているのかな」なんていってたけど、近頃ボクは、カーテンのハンモックに入るのもままならないんだ。
 それで、ボクはずっと額縁の裏にはさまっていることになった。おなかはすいてきたし、このまま見つけてもらわないと死んじゃうかもしれない。みんなの声は聞こえるけど、ルミも騒がないから、異常があったなんて誰も思っていないようだった。

 しばらくすると、また、パパの声がした。
「やっぱりマイがいないぞ。カーテンにはいない」
 それからママの声もして、ふたりで台の下とか探しているようだった。
「マイちゃん、どこ?」って呼んでいたけど、ボクとしては、教えようがない。
「こっちだよ」って声でも出せばよかったのかもしれないけど、そんなとき、うまく鳴いたりできないんだよ。
「どこに落ちちゃったのかしら」
「こっちのほうには、こないと思うけど」 なんて聴こえて、いきなり額縁の下に隙間ができて、ボクは床に落ちてしまった。ママが額縁を持ち上げたらしい。
「いた、いた、マイちゃん、こんなところに」
 そういってママが拾い上げてボクをなでてくれた。
「ああ、よかった。おなかがすいたでしょ」と、ママがパパからえさを受け取って食べさせてくれた。水もなめて少し落ち着いたので、ルミに無事をしらせようと「ピイ」と鳴いた。ルミも応えた、ボクはそのまま鳥かごに入り、一件落着。でも、あんな思い、もう絶対、したくないな。

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