そして10日の朝も、いつもと変わらないようすだった。それが、あやさんが夕方、外出から戻ってくると、夫がいった。
「ココの様子がおかしいんだ」
午後の放鳥時に鳥かごから出なかったという。
「ツボ巣の中で丸まっているけど、もうダメかもしれないな」
「どうしたのかしら?」
「あの卵管脱のせいで、ダメージがあったのかもしれないな。もう老齢だし」
それでもあとで、あやさんが鳥かごをのぞいたとき、ココはツボ巣の中からこちらを見ていた。クリは心配そうにそばの止まり木でじっとしていた。鳥かごに暖房器を取り付けて布をかけ、そのまま寝かせた。
それから1時間もたたないうちに、暗い居間から変な騒ぐ声がした。クリの声だった。夫が覆いの布を外して、中からスカイカフェに乗って動かなくなっているココを取り出した。えさを食べようとしてそのまま死んでしまったらしい。もう死後硬直が始まっていた。
たしかにココはもう老齢だった。メスの中では最年長の6歳10か月で来月には7歳になるはずだった。同時に生まれた姉のナナは腫瘍がもとで2年前に死んでいる。ココはそれから2年も生きて、パピにもクリにももてて、クリと結婚した。ナナに比べれば晩年はいい人生だったかもしれない。けれどもあと1年余は生きると思っていた。ココだってそうしたかっただろう。あまり長く苦しまないで死んでいったことがせめてもの慰めだ。
「ココちゃん、ナナとフーのところで安らかに眠ってね。かわいかったよ」
翌日のきょう、ココを七とフーたちの眠る庭の隅に埋葬した。桜文鳥ばかりが死んで、4羽いた桜文鳥がみんないなくなってしまった。メスばかりで、メスでこれまで1番長生きしたのは満身創痍のフーだった。フーはココの母親だけと白文鳥で7年半生きた。桜文鳥は文鳥の中では比較的丈夫って聞いていたけれど、その話は本当なのだろうか。
またクリが独り残されて寂しそうだ。
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