2016年4月15日金曜日

1、文鳥たちの朝

 朝6時すぎ、だれかがさえずっている。でも、それは1羽だけ。だれかわからないけれど、若いオス文鳥だろう。ほかのものは、あやさんが起きてくるのを静かに待っている。
 カーテンを引く音がしてあやさんの部屋のドアがあくと、待ってましたとばかりに一斉にさえずる。うれしそうな声だから、かわいい。
 居間のカーテンもあけ、
「パピちゃん、ココちゃん、おはよう」などといいながら、あやさんが鳥かごのおおいを順番に外していく。
「チュン、チュン」「ピピ」
 スカイカフェに仲良く乗っていた2羽が鳴いて、ココが鳥かごの中を動く。つぎはチーで、いつも順番は決まっている。
「うう~ぐるるう~」
 あやさんのあいさつが終わらないうちに、チーは相変わらずの鳴き声を返す。
 それから、トビとユウ、マイとルミ、メグとランの順に
「何々ちゃん、おはよう」といって布を外していく。
「チチチ」「ポピ」「チュン」「るるう」などと次々に返事があって、えさを食べだす。
 部屋の反対側の3つの鳥かごも同じようにする。みんな自分の布が外されるのを待っていて、少し遅れると早く外せと催促する。
 スーは元気よくさえずり、クリは「チュン」だったり「ぐるるる」とチーに近い声をあげるけれど、ミーはキョトンとしていることが多い。
 こうして彼らの1日が始まる。
 朝のあいさつに限らず、オスのほうがメスよりも反応がいい。メスは返事をしないことも多く、フーやピポも声を出して応えることは少なかった。それでも彼女たちは、必ず何らかの反応をして、あいさつに応えた。フーはこちらを見てあごをしゃくり、ピポは鳥かごの中を跳び回ったりした。それに比べると、トビもユウもランもあまり反応しない。ルミもマイと鳴き合っているだけだけれど、ココだけはパピと一緒に返事をしている。
 ココは6月には6歳になるから、いまではこの家ではメスの最年長。パピと暮らすようになって落ち着いている。
 朝のあいさつがすむと、みんなすぐにえさを食べだすけれど、抱卵中のものはまだ食べないでがんばっている。
 それからあやさんは鳥かごの下の新聞紙、えさの〝文鳥専科〟と水を新しくし、菜さしのサラダ菜も換える。サラダ菜は芯に近いところが人気だけれど、この部分がまわってくるには1週間もかかる。ちなみにスカイカフェのえさと止まり木の掃除は夫の役目で、これは午後の放鳥時に行われっている。
 えさが新しくなると、みんなすぐに食べだして、そのあと水浴びをするもの、ひとしきり、さえずるもの、ほかの鳥かごに向かい言い争っているものと様々だけど、やがて静かになるから、また眠ったのだろうか。
 お腹が満たされて、ひと眠りってところかもしれない。最近では午前中に放鳥することはほとんどないから、みんな午後にそなえて静かにしているようにもみえる。

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