「チビが卵を抱えて飛び上れないみたい」と、夫にいうと、
「卵詰まりかな」と心配そうな返事。
以前にもそんなことがあって、そのときはスカイカフェのえさ入れに入って動けないでいた。お腹が痛かったようで、手に乗せて暖めてやると、楽になったのかそのあとえさを食べ、まもなく棒状の卵を産んだ。それでも、チビはその後ちゃんとした卵を6つも産んで4羽のヒナをかえしている。そのうち1羽は、生まれてすぐに死んでしまったものの、スー、ミー、ランの3羽は立派に育っている。それは、半年前のことで、もう参道はできているはず。すると、急に冷えてきたから、そのせいかもしれないと思い、あやさんはチビを暖めなければと、手に乗せた。
手の中で温めていると、チビは心地よいのかじっとしている。そのうちにバサバサとはばたいて、大きなまっ白いフンをした。でも卵はまだ出てこない。
おなかが空いているだろうと思い、手の中でえさを食べさせると、いつものようにせわしく食べた。でも、相変わらず卵は出てこない。
夫が卵を出そうとして、チビのお腹をさすっていたけど、お腹の中の卵が潰れてしまったかもしれないと、大変なことをいう。まだお尻から出かかっていないのに強く圧したらしい。
「大丈夫かしら?」
「鳥かごに暖房をつけて、ツボ巣に入れよう」と、いうことになり、チビは鳥かごに戻された。クリも心配そうで落ち着かない様子。夫がいなくなってしまったので、あやさんは家事をしながら、ときどきツボ巣をのぞくことになった。
そんな中、ツボ巣でバサバサ暴れる音がする。のぞいて見ると、クリもツボ巣の中にいるようなので、チビが卵を産み落とそうとして、暴れているのだろうと思った。
「どうか、無事に卵が出ますように」と、あやさんは祈るばかりだけれど、そのうち、バサバサは止んで静かになった。クリが出てきてえさを食べている。チビはツボ巣のふちにいて、中をのぞいていた。
「卵がでたんだわ。よかった」と思ったものの、確かめるまでは安心できない。
それから2時間くらいして、あやさんがチビの様子を見に行くと、クリがまたツボ巣のふちに止まって中をのぞいていた。そして、再びツボ巣の中で、バサバサッという音がした。それから静かになって、クリがチビを抱いている。そのまま静かなときがしばらく続いて、クリがツボ巣から尾羽を出して心配そうに中を見ていた。あやさんは祈りながら待つ。
少しすると、クリとチビが並んでツボ巣から顔を出していた。
「チビが顔を動かしたわ」と、あやさんはホッとする。早く、卵がどうなっているのか知りたいけど、すっかり2羽でツボ巣の入口をふさいでいる。
夫がきたので、クリたちのツボ巣を見てもらった。ところが、
「何もないようだぞ」という。では、さっきのあのバサバサしたさわぎは何だったのだろう。それにチビもいつもの様子になっている。
鳥かごの掃除のとき、ツボ巣の中を確かめた夫は、
「やっぱり、何もない」といった。
チビはそれから寝るまでいつもと変わらない様子で、バサバサすることもなかった。いったい、お腹をいたがっていた卵はどうなったのだろう。あやさんには、チビがあのツボ巣で暴れていたときに、産み落としたと思えるのだけれど、ないということは、チビかクリが潰れて出てきた卵を食べてしまったのだろうか。まるでキツネにつままれたような気分。
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