「死んじゃわないかしら……」と心配しながら1時間ほどチビを抱いていた。予感は的中して、9時には全く動かなくなった。クリがきて、チビのしっぽを突っついたりしたものの、チビはもう反応しなかった。まだ全身があたたかいのに嘴が固く閉じている。明らかに死んだとわかった。1年9か月の短い一生だった。
ピポがいなくなって半月になるけど、まだ見つからない。チビが死んでしまったので、いまあやさんちの文鳥は12羽になっている。ピポの夫のチーに加えチビの夫のクリまでが、さびしい日々をおくることになりそうだ。それにスーとミーもまだ独身だから、独り身のオスが4羽にもなってしまった。
翌日、チビの亡骸をフーたちと同じ場所に埋めた。クリはツボ巣の中で「クークー」いっていたらしいけど、そっと泣いていたのだろう。
チビとクリは生まれたときからずっと一緒に暮らしてきた。あやさんちではなぜか桜文鳥はモテないから、もしチビがクリと離れたら、独身のままだっただろうと容易に想像できる。これまでメスで結婚できなかったのはナナ、ココ、ユウ、それにトビだけど、白文鳥のトビはモテルから子どもを持った(それがクリとチビ)。あとの3羽の桜文鳥はそれもなく独身のままだった。そう考えるとチビは、少し我儘でも格好のいいクリーム文鳥のクリと結婚できたから幸せだったかもしれない。そして3羽の立派なヒナを残したのは、すごいことだ。そのために命を縮めてしまったような気もするけど、それは仕方のないことだと思って、あやさんは心を鎮める。チビはあのひ弱な体でよく3羽のヒナを育て上げたと本当に関心する。そのため、かなり飛べなくなってしまった。みんなのようにカーテンレールの上にやっと上がれるようになっていたのに、子育て後に再びそこに上がることはなかった。チビは足も小さくて力がない。短い一生で可哀想だったけれど、頭のいいチビは精一杯に生きて、相次いだフーと七の死で悲しみの中にいたみんなに、新しい生命という希望をもたらしてくれた。
この日、チーに珍しいことがあった。ピポが消えてしまってから、自分の守り神を失ったチーは、カーテンの場所取りもできずに、あやさんや夫にくっついている。チーはひ孫までいる長老の身なのに、ピポがいないとなさけない有様だけど、 最近はマイたちの水浴びのときにも、チーがあやさんの腕にくる。そしてマイに追い払われている。ところが、この日はチーがひとりで先に飛んできてあやさんの腕に下りた。チーはこれまでもこうして蛇口の水を飲んだことがあるものの、手のひらのプールに入ったことはない。水浴びは大好きなのに、水のたまった手に乗るのは恐いのだろう。それが、
「チーちゃん、ぉ水の中でバサバサッてしてごらん」と、いったら、初めて手のひらのプールに入って水浴びをした。ピポがいなくなって、チーの中で何か変かが起きているようだ。
ピポはまだみつからない。どこかに保護されていてほしい。
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