あれ、あんなところに桜文鳥がいる」
「えっ、どこに?」
「あの木の上のほうにスズメに混じっていた。たしかにホオが白かったから桜文鳥だ」と、うなずく夫。
「どこ? どこへ行った?」
「もう飛んで行ってしまったよ」
あやさんは自分の目がじれったい。
「元気だった? 保護しなくてよかったのかしら?」
「高いところにいて逃げて行ったから無理だよ」
夫は探している人がいないか、あとで調べてみるといった。あやさんがその桜文鳥の姿にピポを重ねたのはいうまでもない。前日は低気圧がきて荒れた天気だった。それなのに小鳥たちはきょうも元気に飛んでいる。ピポもあんなふうにどこかの群れに入れてもらっているかもしれないと思うと、少し気持ちが明るくなった。。ピポなら高いところにもビューンと上がれるし、けっこう飛べるから、えささえあれば生きて行けそうだ。もしそうなら、いつか庭のえさ入れにスズメたちに混じってピポがくるかもしれない。
あやさんは、もう外そうと思っていた庭のフェンスに取り付けた白いえさ入れを、しばらくそのままにすることにした。どうせ捨ててしまう文鳥たちの食べ残しを入れているのだ。スズメやオナガ、ハトなどがきて、毎日きれいに食べてくれる。
ピポへの想いはつのるばかり。
0 件のコメント:
コメントを投稿