2016年3月7日月曜日

(二十五)ランの反撃

 近ごろ、メグがしつこくトビを追いかけている。去年ランと一緒に暮らしだしたころは、借りてきた猫みたいに静かだったのに、また独身時代にもどってしまったように乱暴だ。いまは1年年上の姉のトビを追いかけているけれど、夫によれば前はよく母親のピポを追いかけていたらしい。ピポがいなくなった日は家の点検が終わってからだったため、いっせいに放鳥していた。みんなで飛びまわって騒いていたから、そのときメグはピポを追いかけていたかもしれない。ピポは夫が傘をとりにもどってきたとき、逃げて行ってそのまま外に飛び出した可能性もあると夫がいう。たしかにそれも考えられるものの、だからといってメグを責められない。すべては飼い主に責任があるのだから。
 それにしてもメグは、トビが気の毒なくらい執拗に追いかけている。ときどきユウがトビの加勢にいくけれど、ほかのメスには見向きもしないから、白文鳥に関心があるようだ。
 メグに追われてトビはしばしばあやさんの部屋に逃げてくる。ところが最近はメグまでトビを追ってあやさんの部屋にくるようになった。このありさまに夫は怒ってメグの放鳥はしないといった。
 それでもランが同じ鳥かごにいるから、メグだけ閉じ込めておくわけにもいかず、最後に鳥かごを開けることになった。
 この前などは、メグがトビを捕まえて上に乗ると、それを見たスーが何を思ったか、さらに上に乗り3段になっていたという。もちろんメグは怒ったようだけど、スーは見かねて行動をしたのだろうか。
 そして、いよいよ腹に据えかねたランが反撃に出た。それは、ほとんどの文鳥たちが鳥かごにもどった夕方だった。メグとラン、それにミーの3羽がまだメグたちの鳥かごの上にいた。あやさんが叱ると、メグは自分の鳥かごに入った。と思ったら、またすぐに出てくる。ランが入らずにミーといるから気になるのだろうと思った。
 けれども、ランがメグに着いて鳥かごに入ろうと思えば簡単に入れるはずで、ミーにそれを邪魔するほどの力はない。何かおかしいのだ。どうもランはメグについて鳥かごにもどりたくないようすで、ミーのそばにいる。あやさんは3羽をそのままにして夕食の準備を始めた。
 少しして静かになったのでメグの鳥かごをのぞくと、だれもいない。なんとミーの鳥かごにランとミーが入っていた。えさを食べていたので、そのままとびらを閉めてメグをさがすと、自分の鳥かごに入ったものかどうかとウロウロしている。ランは落ち着いたようすで、この日、メグに愛想をつかしてミーを選んだようだった。ランはあんなにミーをきらっていたのにと、あやさんはランの変化に驚き、2羽の成長を感じていた。
 ランはよそのメスを追いかけているメグよりも、自分のことを想い続けてくれるミーのほうがよくなったのではないか、だとしてもメグは自業自得だからしょうがないと思った。
 ところが、この夜、テレビから気象情報が流れて夫が鳥かごに布をかけだすと、新たな展開があった。
「ランが暴れ出して鳥かごから出たがったんだ」と夫。鳥かごをあけると、ランが飛び出して部屋の中を逃げ回ったという。メグの鳥かごをあけてやると、メグも出てきて2羽で飛びまわっていたものの、けっきょく元のさやに納まりメグと一緒に自分の鳥かごにもどったのだ。
 これで少しはメグもこりたかどうか、これからが楽しみだけれど、それにしてもミーは〝いいつらの皮〟で、ぬか喜びだったと、さぞがっかりしたことだろう。

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