2016年6月21日火曜日

10、クリとココ

 ココの誕生日の夕方、パピが独り鳥かご内にいて、ココはまだクリと遊んでいた。
 少しすると夫が、トビとユウ姉妹も鳥かごに入ったといって扉を閉めた。あと出ているのは若いミーとスー、それにクリとココだけど、スーは夫にいわれ手に乗って鳥かごに戻った。するとミーも自分から鳥かごに入る。ミーはときどき隣のクリの鳥かごに入ってえさを食べているけれど、このときはクリのところが空いているにもかかわらず、ちゃんと自分の鳥かごに入った。残りはクリとココ。と、思ったら、夫が変な声でいった。
「あれ、まてよ。これはクリとココだ」
 トビとユウの鳥かごに入っていたのはなんと、クリとココ。白いのと黒っぽいのがいたのだから間違えるのも無理はない。
 そういえばこの場所には以前、ココとナナの鳥かごが置いてあった。ココにしてみれば自分の鳥かごにクリを誘い入れたような気でいるのかもしれない。でも、このままではトビとユウの入るところがなくなってしまう。それに、パピはどうなる?
 夫がクリとココを鳥かごから追い出す。ところがトビとユウが鳥かごに戻ろうとすると、クリが邪魔する。ココとそこにいたいから必死だ。
 気持ちはわかるものの、そういうわけにもいかないので、クリを追い払うと、トビとユウが鳥かごに戻り、そのうちにココもパピのところに入った。結局クリはあきらめたように夫の手に乗って、自分の鳥かごに入った。
 ところが、その翌日は、もっと大変だった。ココとクリはますます仲良くなってきて、夕方になってもまた鳥かごに戻らない。そして、やはりトビとユウの鳥かごに入ろうとした。パピも自分だけ鳥かごにいるのは落ち着かないとみえて、いつまでも出ている。
 それでも夫にいわれて、やがてココはパピと一緒に自分の鳥かごに戻った。ミーもまだ飛び回っていたものの、あやさんが叱るとすぐに鳥かごに戻った。けれどもクリだけは、まだ飛び回っている。どうしてもココと一緒になりたいらしい。
 クリは就寝の時刻をすぎても鳥かごに戻らす、暗くなった居間から明るいあやさんの部屋に逃げてきた。初めてあやさんの部屋にきたクリは、どこにとまったらよいかわからずに部屋の中を飛び回って、やっとカーテンレールに止まった。名前を呼んで手を差し出すと逃げ回り、何度か部屋の隅に落ちる。パニックになっているようだ。少しほっておいたら、いよいよあやさんの肩にきた。それから手に乗って、しっかり指を掴む。クリは手に慣れているから。こうしていると安心なようで、そのまま鳥かごまで指にしっかりつかまっていた。
 何とか自分の鳥かごに戻ったクリだけど、ココへの思いが日に日に強くなっているようだ。
 そして3日後の今夜、ついにココとクリが一緒に寝ることになった。トビとユウがパピの鳥かごに入ったのを幸いに、夫がそのまま扉を閉めたのだ。それにより空いたトビとユウの鳥かごにクリたちが入れることになった。クリのあまりの思い入れに夫が応援した形になったわけだけど、このままうまくいくのかどうか、明日になってみなければわからない。

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