2016年7月1日金曜日

12、桜文鳥のココの悩み

 ココのその後は複雑だ。あのパピの鳥かごに戻っていた日の翌日、ココはまたクリの鳥かごに入って一夜を過ごした。やはり、このままクリとの暮らしを選ぶのだろうか、と思っていたら、その次の夜はパピのところに戻っていた。
「ココは、 もうクリのところには行かないのかしら? 元のサヤに納まったのかしら?」
 そんなふうに思っていたら、放鳥時にはクリとふたりでトビとユウの鳥かごに仲良く入っていたりする。
 どうもココの希望は、広い鳥かごでクリと一緒に暮らすことのようだけど、
「そんな勝手、許されないわ」とあやさんは考える。たしかにクリの鳥かごにはツボ巣が1つしかないし、広いとはいえない。それに以前にクリといたチビはココに比べて身体が小さかった。とはいえ、それでもチビはクリとそこで3羽ものヒナをかえして育てていた。夫は、
「もう1つ大きい鳥かごを購入しようか」というけれど、それも簡単ではない。何といっても置き場がないし、パピの気持ちを思うと複雑だ。その点では、ココもパピに気を遣っているふしもあり、年老いた父親を見捨てて若いクリのところにまるっきり行ってしまっていいものかと、ためらっているのかもしれない。
 ココにとって、やっと巡ってきた春なのに、何かと悩ましい日々のようだ。
 ココは気が強くさっぱりした性格かと思っていたが、やはりフーの子供だけあって繊細で優しい面があるのかもしれない。
 文鳥も男女のあいだは難しそうで、若いうちにペアになってしまえばいいようだけど、ココの場合はそうでない。一緒に暮らしてきた姉のナナが死んでしまったから、同時期に妻を亡くした父親のパピと暮らすようになったから、どれほど好き合ってパピのところへきたかわからない。そんなココが初めて自分に言い寄ってくれるクリに魅かれるのも無理からぬ話。
 今夜もココはパピの鳥かごに入ったけれど、クリはなかなか自分の鳥かごに戻らなかった。この状態が結着するにはけっこう時間がかかりそうだ。
        (写真はツボ巣が2つある大きいほうの鳥かご)

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